フランスのミカエル・アース監督作品

一番好きな色は青色で、「絵画で言えば印象派のような」映画が好きだというフランスのミカエル・アース監督の作品『アマンダと僕』『サマーフィーリング』


青が好きなだけあって、どちらの作品も空の青、湖の青、海の青などの自然の色の美しさは、16mmフィルムで撮影されていることで、より効果的になっていると思います。フィルムの持つ質感が人々に感動を与える、と16mmフィルムで撮影することは監督の譲れないこだわりで、撮影は、両作品共にセバスティアン・ブシュマン。

「喪失と再生」というテーマは同じだけれど、『アマンダと僕』は、アマンダとの関係性に躊躇しながらも癒され希望を見出していく様子がわかりやすく描かれています。2018年秋に開催された第31回東京国際映画祭でグランプリと共に最優秀脚本賞も受賞しているのも納得です。

『アマンダと僕』が東京映画祭で受賞したことをきっかけに、前作の『サマーフィーリング』の上映が決まりました。同じテーマですが、『サマーフィーリング』の方がセリフが少なく、「美しいのが哀しい」をとことん映像で表現していると思います。3度の夏という時間の経過で、人の感情がどういう風に癒されるのか、違う都市の夏が、少しずつ見えかたが違うことを感じる(私にとっては、「戸惑い」ー「絶望」ー「再生」と感じましたが)「感性でみる」映画だと思います。

ミカエル・アース監督のもう一つのこだわりは音楽。とにかく音楽が大好きで、「音楽のような映画づくりが理想」だというくらい。音楽好きが作った映画だというのが映画を観ていてわかります。『アマンダと僕』は、ニコル・キッドマン出演の映画『ラビット・ホール』の音楽を担当したアントン・サンコ。エンディングの曲は、監督がパルプの大ファンだったこともあり、ジャーヴィス・コッカーにシナリオ読んでもらって、曲を書いてもらったそうです。(ジャーヴィス・コッカーの書き下ろし!!)『サマーフィーリング』の音楽担当は、フランスのオルタナティブ/インディのタヒチボーイ。サントラには、タヒチボーイ以外にもピクシーズやアンダートーンズ、ラーズなどが入っている他、映画の中でマック・デマルコが本人役でライブします。エンディングのあとに流れるベン・ワットには本当にやられました。この辺りの音楽が好きな人には、映像の美しさと音楽を聴いているだけでも満足できるのではないでしょうか。(いや、良さはそれだけではないのですが、どちらの作品も音楽好きにはかなり刺さると思います)

映像と音楽とストーリーと、どちらがいいとかではなく、好みの問題だと思います。どちらかご覧になられて好きだった場合は、もう1作品もぜひご覧ください。

それぞれの映画の詳細に関しては、刈谷日劇のオリジナルレビューをご覧ください。
『アマンダと僕』のオリジナル・レビュー
サマー・フィーリング』のオリジナル・レビュー