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第31回東京国際映画祭で、審査員の満場一致でグランプリと最優秀脚本賞のW受賞した『アマンダと僕』。テーマは重いのだけど、その重さが仰々しくなく静かに心温まる作品です。
アマンダ(イゾール・ミュルトゥリエ)、かわいい!むちゃくちゃ愛おしい!台詞ではなく情緒で伝える丁寧な描写が、いい意味でフランス映画の淡々とした良さとしてにじみ出ている映画だと思います。初夏のパリの日常もとっても素敵。撮影は前作『サマーフィーリング』と同様にデジタルではなくフィルム。フィルムのもつ柔らかさが、パリを淡く優しく描いていて、本当に美しい。ロンドンでの自転車のシーンも、ロンドンじゃなくてパリみたいでした。
「アマンダ」と「僕(ダヴィッド)」を通じて、今のパリが抱える問題を劇的にではなく現実的に描いています。パリの現実は今の日本ではちょっと遠い話かもしれないけど、彼らに突然降って湧いた境遇は誰の身にも起きうること。そんな時は、こんな風に戸惑い、こんな風に大変で、こんな風に乗り越えていくのかもしれないと思いました。
日常を送りながら悲しみを抱えるというのは、映画みたいに泣きたい時に泣けるわけでなく、感情が思わず湧き出てくるのは、駅の雑踏の中だったり、公園を散歩していて周りの景色が綺麗な時とか何気ない日常のワンシーンで思わず涙が出るようなものなんだろうなぁと思いました。いろいろな思いを抱えた日常をアマンダとダヴィッドの目が物語っていて、そこもこの映画の見所のひとつです。
幸せは日常のいろいろなところに散りばめられています。今日という日は今日だけで、明日はまた違う日。それは絶望でもあり、希望でもあります。1日1日、大切に過ごしていきたいと、この映画をみて思いました。