COLD WAR あの歌、2つの心
Zimna wojna
スクリーン 2
G
8/23 - 8/29 : 12:10 / 20:30
8/30 - 9/5 : 未定
上映開始日:8/23
上映終了日:9/12
ポーランド イギリス フランス 合作
監督:パベウ・パブリコフスキ
ヨアンナ・クーリグ トマシュ・コット ボリス・シィツ
オフィシャルサイト
OPUS FILM Sp.z o.o./Apocalypso Pictures Cold War Limited

COLD WAR あの歌、2つの心

冒頭からモノクロの写真のように芸術的な映像と、民族音楽と、奏でる演奏者の切ない表情で始まり、その美しさに心を奪われます。余韻はあるけど、無駄なものは排除されていて、すべてのシーンが芸術。民族音楽やピアノの演奏やジャズを奏でるシーンなど、音楽映画と言えるほどの素晴らしさです。そして、タイトルにもなっている、「2つの心」という歌が、何度も形を変えて流れ、その時々の二人の状況をセリフの代わりに歌の変化で表現、観るものの心を揺さぶります。

まずは、映画の背景となった、第二次大戦後の冷戦下のポーランドについて。

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真ん中の濃い色の国がポーランド。左隣はドイツで、右隣の薄いグレーが冷戦下のソビエト連邦共和国です。(現在は、ポーラントの隣国との国境は(飛び地以外)ロシアと接しておらず、ソ連から独立したベラルーシやリトアニア、ウクライナです)この地域には紀元前5000年頃には文化があった形跡があり、その後10世紀頃には現在のチェコとスロバキアのほぼ全域、オーストリア、ハンガリー、ウクライナ、ベラルーシ、ドイツの一部を収める大国の時代もありました。その後、時代によりモンゴル帝国、オスマン帝国、ロシア帝国、プロイセン王国、ドイツ帝国(ナチス)などから侵攻を受け、幾度も分割や消滅を経験します。

第二次世界大戦中もナチスとソ連に侵略され、両国に分断され国家が消滅しますが、大戦後は、ドイツの降伏により(ソ連に都合のよいように国境を変更されることで)ポーランドは復活します。が、独立国家ではあるもののソ連の衛星国として、かなり主権を制限されていました。『COLD WAR あの歌、2つの心』は、そんな大戦後の数年後から話が始まります。映画の中でもスターリンを賞賛する歌を強制されたり、体制から監視されたりして、祖国でありながら抑圧されている悲しさが、二人の愛の形と音楽という芸術を通して描かれます。

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「冷戦」時代というのは、西と東が地理的にも文化的にも分断され、激しく対立していた時代です。そんな時代にいろんな手段で「東側から西側へ行く」ことや、祖国を離れるということ、言語が変わるということがもつ意味は、ほぼ説明されないので、わかりづらいと思う方もいらっしゃるかもしれませんが、変化していく歌に込められています。あの歌、「2つの心」という歌は美しく切なくなんども流れます。「2つの心」の歌詞「およよ〜♪( ojo joj)」は、ポーランド語で「らららら〜」的な感じだと思います。シャレてて気取ったフランス語ではなく、やっぱりポーランド語の「およよ〜♪( ojo joj)」じゃないとダメだってことなんだと思います。

「およよ〜♪( ojo joj)」は、公式サイトのサウンドトラックというところで聴ける他、Spotify、Amazon Music、Apple Music でも聴くことができます。映画を観なくて聴いてもよい歌ですが、映画を観てから聴くと、ものすごくいいです。題名は『Dwa Serduszka』です。パリのジャズもいいし、サントラもきっといいのではないかと思います。音楽がいい映画というのは、音響がいい刈谷日劇でぜひ観て頂きたい作品です。

また、現在、刈谷日劇でロングラン上映中の『僕たちは希望という列車に乗った』、同時代の東ドイツの話なので、ご覧頂くと冷戦時代の東側の不自由さなどがわかりやすいと思います。