WEEKEND ウィークエンド
Weekend
R15+
スクリーン 
11/29 - 12/12 (予定)
上映開始日:11/29
上映終了日:スケジュールで確認ください
イギリス
監督:アンドリュー・ヘイ
トム・カレン、クリス・ニュー
オフィシャルサイト
Glendale Picture Company MMXI

WEEKEND ウィークエンド

『荒野にて』『さざなみ』のアンドリュー・ヘイ監督の初期作品(2011年)です。アンドリュー・ヘイ監督、今年になって知りましたが、人の心の描写の仕方、会話の流れ、風景の描き方、間の取り方など、私は大好きです。男同士のラブシーンがダメな人は観れないと思いますが、静かに淡々とした(けれどもじんわりと深い)ラブストーリが好きなら、きっと大好きだと思います。

ゲイ(同性愛者)の映画ですが、同性愛がテーマというよりも、2人の恋愛がたまたま同性同士だった、そんな風に同性愛を特別視してない、等身大の同性同士の恋愛を描いているように思います。同性愛を特別視はしていませんが、二人はゲイなので会話の内容は、ゲイとして社会にいることの生きづらさであったり、家族や知人にセクシュアリティを告白する「カミングアウト」などの話題がたくさん含まれています。その会話の内容などは、ストレート(異性愛者)の人たちが想像する「ゲイの悩み」などではなく、リアルな当事者の声なのではないかと思います。

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本作品は、それ以降のゲイ映画の流れを変えた、と言われているそうです。それは、本作以前のゲイの恋愛映画の多くは、面白おかしいコメディタッチのものか、男女間の恋愛と絡んで悲恋的なものなどが多く、ゲイの恋愛は「異性同士の恋愛と異なる特殊なもの」という観点で、ゲイの普通の日常的な恋愛ものはほとんどなかったからです。ゲイだって、ストレートと同じように恋愛をします。

恋に落ちるということ。心を開くということ。これまで、どういう風に過ごしてきたのか、どういう風に人を好きになっていくのか。人を好きになるのは理屈じゃないですよね。同性を好きでも異性を好きでも関係ありません。

そんな恋に落ちていく2人の2日間の日常をアンドリュー・ヘイ監督は、美しく丁寧に描きます。二人の会話がとにかくいい! でも会話がないシーンはもっと素敵。見つめ合う二人、自転車に乗る二人、彼が帰る姿を14階の部屋から眺めているシーン。会話以上に恋しさや切なさが伝わります。

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本作品は、激しくドラマチックな展開はありません。だからといって、そこに激しい感情がなかったというと、そうではなくて。長い人生の中のほんのちょっとの時間を共有しただけなのに、その思い出がが何物にも変えがたいほどの宝物になったようなキラキラした気持ちや、淡々としているけれど、傷つきたくないという本音やその奥に秘めた「愛したい」「愛されたい」と願う本当の気持ちが痛いほどに伝わってきます。

運命的な出会いほど、探していない時に突然やってくるものなのかもしれません。ほんのちょっとの交わりのはずだったのが、相手のことを知れば知るほど、惹かれあってしまう。けれども、突然の出会いが必ずとも恋愛を始めるパーフェクトなタイミングだとも限らない訳で。

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この映画が製作された2011年、イギリスでは同性婚はできませんでした。それどころかイギリスでは、1967年まで同性愛行為は違法でした。(第二次世界大戦後までのストーリーの中に出てくる同性愛者だという理由で逮捕されるシーンがあるイギリス映画はたくさんあります。)その後、少しずつ法律が改正されて、同性同士で結婚もできるようになっていますが、同性愛者に対して迫害が完全になくなったかというとそうではないようです。今年(2019年)にも、同性のカップルが公共交通機関で襲われて大怪我をする事件があっています。

本作品の主人公に消化不良な気分を味わわせているのは、多様性を認めきれない一部の人を容認してしまっている社会で、同性婚ができるようになってさえ、まだまだ変わっていかなければいけないところは多いのだと思い知らされました。日本ではまだ同性婚すらできないですが、これも少しずつ変わってくるのでしょうか? (余談ですが、刈谷日劇の「パートナー割」は、同一住所で生計をされている方のどちらかが50歳以上のカップルはお二人で2000円とお得な割引料金制度がありますが、同性パートナーにも適用していますよ!)

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最後のシーンは、すごく胸を打ちます。2日間で2人がどういう風に変わったのか。とても小さな変化ですが、それはとても大きな変化でもあります。映画のラストシーンも本当に美しくかっこいい。変わった二人に訪れる未来のことを想像すると、映画を観終わった後、じわじわとくる余韻もとても心地よい作品です。ぜひ劇場でご鑑賞ください。